エミール・ギメさんの『明治日本散策 横浜・鎌倉』を読みました。
ギメさんは1876年、明治9年に来日し、横浜から鎌倉、江の島を旅しています。
なるほど。印象に残ったのは、風景そのものよりも、そこに暮らす人々です。
茶屋で客を迎える人。
赤子を背負う人。
宿で働く人。
人力車を引く人。
着物や蓑、褌をまとい、それぞれがごく自然に暮らしている。
その姿が、景色の一部になっていました。
まるで、人々の話し声まで聞こえてくるようです。
仕事柄、人力車夫の描写には特に目が留まりました。
褌ひとつで軽やかに走る姿は、現代では少し特別に映ります。
私自身も鬼太鼓座では褌を締めて舞台に立つことがあります。
実際に身につけると、身体を締め付けず、整う。とても合理的な衣服です。
裸足や草鞋、下駄で歩く人々の姿にも興味を惹かれました。
最近、ベアフットシューズやワラーチが注目されていますが、昔の人にとっては、それが日常だったようです。
身体に合わせて衣服や履物を選び、暮らしをつくっていたのかもしれません。
住まいも同じです。
襖や障子を動かし、季節や人数に合わせて空間を変える。
必要なものだけで、心地よく暮らす。
そこにも、日本らしい機能美がありました。
この本を読んでいて何度も思ったのは、「美しい」とは、飾ることではないのかもしれない、ということです。
身体に無理がないこと。
暮らしに無駄がないこと。
自然と人が、ほどよい距離で共にあること。
ギメさんは外国人だからこそ、その美しさに気づけたのかもしれません。
その眼差しを借りることで、見慣れている鎌倉や江の島の景色も、少し違って見えるような気がしました。
ギメさん!

